交通事故の慰謝料は通院日数で計算できる?算定基準や注意点も解説
交通事故の慰謝料と通院日数の関係を紹介します。交通事故に遭った際に請求できる慰謝料の種類や通院日数・通院期間の数え方をまとめました。また、弁護士基準にした計算方法や自賠責基準の計算方法も掲載しているので、慰謝料を請求する際の参考にしてください。
目次
交通事故の慰謝料に通院日数はどう関係するのか
交通事故に遭った際は、相手に対して慰謝料を請求することが可能です。本記事では、交通事故の慰謝料の請求方法や通院日数との関係性について紹介します。
弁護士基準や自賠責基準、任意保険基準に基づいた交通事故の慰謝料の算定基準や通院日数・通院期間による計算方法をまとめました。また、請求できる慰謝料の相場や注意点も掲載しているので、慰謝料を請求する際の参考にしてください。
交通事故の慰謝料の種類と通院日数・通院期間の関係
まずは、交通事故に遭ったときに、請求できる慰謝料の種類と通院日数・通院期間との関係性を紹介します。慰謝料を請求する際の参考にしてください。
種類①死亡慰謝料
被害者 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
一家の支柱 | 400万円 | 2,800万円 |
母・配偶者 | 400万円 | 2,500万円 |
独身の男女 | 400万円 | 2,000~2,500万円 |
子供 | 400万円 | 2,000~2,500万円 |
幼児 | 400万円 | 2,000~2,500万円 |
+遺族1名 | 550万円 | - |
+遺族2名 | 650万円 | - |
+遺族3名以上 | 750万円 | - |
+被扶養者あり | 200万円 | - |
交通事故の慰謝料請求の種類には、死亡慰謝料があります。死亡慰謝料とは、交通事故によって死亡した場合に残された遺族が請求できる慰謝料です。なお、死亡慰謝料の請求額は通院日数・通院期間とは関係ありません。
死亡慰謝料の金額は、亡くなった被害者が家庭で果たしていた役割や扶養の有無によって決まります。ただし、死亡するまでに入院していた場合は、入院日数分の慰謝料も請求できます。
種類②後遺障害慰謝料
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650万円 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 1,203万円 | 2,370万円 |
1級 | 1,150万円 | 2,800万円 |
2級 | 998万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
後遺障害慰謝料とは、交通事故に遭った際の後遺症が残った場合、請求できる慰謝料です。請求できる金額は認定された後遺障害等級(1~14級)によって異なります。
そのため、後遺障害慰謝料をもらうには通院日数よりも後遺障害と認定される方が重要です。しかし、治療期間に対して通院日数が少なすぎる場合は、積極的に治療する意思がないと判断され、等級認定の審査に落ちてしまう可能性もあります。
種類③入通院慰謝料
入院日数ともっとも関係性のある慰謝料の種類は、入通院慰謝料です。入通院慰謝料とは、交通事故で怪我を負って通院した場合に請求できる慰謝料です。
後遺障害が残らなくても請求できる慰謝料となっているので、傷害慰謝料ともいわれています。通院日数や通院期間、怪我の程度によって金額が変わります。
交通事故の慰謝料の算定基準
次は、交通事故の慰謝料の算定基準について紹介します。弁護士基準や自賠責基準、任意保険基準にまとめて掲載しているので、慰謝料の算定基準を調べる際の参考にしてください。
算定基準①弁護士基準
弁護士基準は、これまでの裁判例をもとに作成されます。3つある基準の中でも、もっとも高額です。弁護士基準では、原則として通院日数・通院期間を基準として算定されます。
また、金額は通院日数の他に怪我の程度によっても変動します。なお、目安の金額としては任意保険基準の2~3倍程度となることが多いです。
算定基準②自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険会社が慰謝料算定に使う基準です。自動車損害賠償保障法に従った補償内容で、被害者を救済するための最低限の水準となっています。
自賠責基準では、1日あたりの慰謝料額が決まっています。そのため、自賠責基準による慰謝料額は3つの基準の中で、もっとも低くなっています。
さらに、自賠責保険の入通院慰謝料・治療費・休業損害といった傷害分の費目の上限は120万円です。上限を超す場合は、加害者側の任意保険会社または加害者自身に請求しなければいけません。
算定基準③任意保険基準
任意保険基準とは、加害者側の任意保険会社が独自に設定している慰謝料の算定方法です。交通事故による慰謝料額は加害者側の任意保険会社との示談交渉で決められます。
この際に、加害者側の任意保険会社から提示されるのが、任意保険基準の金額です。示談交渉が終わり、慰謝料やその他の賠償金額が決まったら、自賠責保険の上限額までは相手の自賠責保険会社から支払われます。
交通事故の慰謝料における通院日数・通院期間の数え方
次は、交通事故の慰謝料請求の際の通院日数・通院期間の数え方について紹介します。事故当時も含むのか、1日に2回以上通院した場合の数え方を掲載しているので、慰謝料計算の際に参考にしてください。
事故当日は含まれる?
交通事故に遭ったその日に、病院で診察・治療を行った場合は、通院1日とカウントすることが可能です。慰謝料はもちろん、治療費や通院交通費も1日から請求できます。
交通事故の当日は混乱している場合もあるので、後から確認できるように記録を残しておきましょう。
1日に2回以上通院した場合
1日に複数の病院に行った場合や、2回以上診察・治療を行った場合でも通院日数は1日とカウントします。しかし、治療費や通院交通費に関しては、受診目的が異なる場合、それぞれの受診先の治療費を請求することが可能です。
診断書などがない場合は、慰謝料の請求ができないこともあるので、1日に何度も通院する際はなくさないようにしっかりと保管しておきましょう。
リハビリ目的で通院した場合
交通事故による怪我の治療行為が完了した後のリハビリ期間も通院日数として、カウントすることが可能です。例えば、交通事故によって骨折した場合、骨自体がくっついたとしても、動きづらさが残る場合はリハビリが必要です。
そのため、リハビリとは怪我した個所を交通事故前に戻す「治療」の一環となるので、リハビリ目的の通院日数も慰謝料請求の際に数えることができます。
ただし、状態がこれ以上よくならないと主治医に判断される症状固定後や、相手との示談が成立した後の場合は、原則慰謝料・治療費の対象外となります。
交通事故の慰謝料の通院日数・通院期間による計算方法
次は、交通事故によって発生する通院日数・通院期間の慰謝料の計算方法を紹介します。弁護士基準と自賠責基準、任意保険基準に分けて掲載しているので、計算する際の参考にしてください。
計算方法①弁護士基準
弁護士基準の計算方法では、自賠責基準・任意保険基準に比べるともっとも金額が高くなります。裁判基準ともいわれており、裁判を起こしたときや弁護士に示談交渉を依頼したときに使われます。
なお、弁護士基準で計算する場合は日額ではなく、入院期間・治療期間を元に慰謝料額があ決定します。そのため、通院日数よりも通院期間の方が重要です。
慰謝料算定表【軽傷】
通院期間 | 通院慰謝料 |
---|---|
1ヶ月 | 19万円 |
2ヶ月 | 36万円 |
3ヶ月 | 53万円 |
4ヶ月 | 67万円 |
5ヶ月 | 79万円 |
6ヶ月 | 89万円 |
上記の表では、月30日単位で計算した場合の慰謝料となっています。通院期間が長くなればなるほど、1月に請求できる慰謝料は少なくなります。ただし、同じ通院月数でも、入院している場合は記載の金額よりも高くなることは覚えておきましょう。
慰謝料算定表【重傷】
入院0ヶ月 | 入院1ヶ月 | 入院3ヶ月 | 入院6ヶ月 | |
---|---|---|---|---|
通院0ヶ月 | 0円 | 53万円 | 145万円 | 244万円 |
通院1ヶ月 | 28万円 | 77万円 | 162万円 | 252万円 |
通院2ヶ月 | 52万円 | 98万円 | 177万円 | 260万円 |
通院3ヶ月 | 73万円 | 115万円 | 188万円 | 267万円 |
通院4ヶ月 | 90万円 | 130万円 | 196万円 | 273万円 |
通院5ヶ月 | 105万円 | 141万円 | 204万円 | 278万円 |
通院6ヶ月 | 116万円 | 149万円 | 211万円 | 282万円 |
交通事故で重傷を負った場合は、通院日数が長くなり、入院する可能性も高くなります。通院に比べると入院した場合の慰謝料は高くなります。重傷とは交通事故によって負傷し、1ヶ月以上の治療を要する場合のことです。
計算方法②自賠責基準
自賠責基準では、1日あたりの慰謝料額が決まっています。2020年4月1日以降に発生した交通事故については、日額で4千3百円です。
そして、自賠責基準における入院慰謝料の計算では、実通院日数を用いる場合と治療期間を用いる場合があります。計算で使用する対象日数は、短い方とします。
通院期間の起算日
自賠責基準における計算の場合、起算日には2種類存在します。交通事故後、7日以内に治療を開始した場合は、交通事故の日を起算日とします。
一方、交通事故の8日以後に治療を開始した場合は、治療開始日の7日前が起算日です。8日後以降に治療を開始した場合は、交通事故当日からの計算ではなくなる点に注意しましょう。
通院期間の終了日
通院期間の終了日には、3つのケースがあります。治療最終日から7日以内に治癒されたと認定された場合、治癒日を終了日とします。
一方、治療最終日の8日後以降に治癒された場合は、治癒日の7日前が終了日です。なお、医師の判断でこれ以上状態がよくならない症状固定と診断された場合、症状固定日が通院期間が終了日となります。
計算方法③任意保険基準
任意保険基準で慰謝料を計算する場合は、各保険会社の独自のルールに沿って計算されます。詳しい方法は各保険会社によって異なるので、公開はされていません。
なお、一般的には自賠責基準で計算した金額とほとんど同じ水準か、やや高い程度の金額になるとされています。
交通事故の入通院慰謝料の相場
次は、交通事故の入通院慰謝料の相場について見てみましょう。通院日数・通院期間が15日の場合の相場をまとめているので、相場を確認する際の参考にしてください。
通院日数が15日の場合
1ヶ月の通院日数が15日の場合、慰謝料がもっとも多くもらえるといわれています。しかし、あくまで条件次第という点には注意しましょう。
15日でもっとも多くもらう条件は、自賠責基準の最低基準で計算した場合と通院期間が1ヶ月のとき、弁護士基準で交渉しなかった場合に限ります。
弁護士基準
弁護士基準の場合は、重傷・軽傷によって金額が変動します。軽傷とはむちうち挫創、打撲などの怪我を指します。弁護士基準で実通院日数が15日の場合、1ヶ月の慰謝料は軽傷で19万円、重傷の場合は28万円です。
もちろん、重傷の方が金額が高く、通院する月が増えればその分金額も高くなります。なお、3ヶ月以上通院する場合は、通院頻度によって金額のふり幅に差があるので注意しましょう。
自賠責基準
自賠責基準の場合は、もらえる金額の上限が設けられています。実通院日数が15日の場合、1ヶ月でもらえる金額は12万9千円となっています。
しかし、通院期間が1ヶ月以上の場合でも慰謝料の金額は同じです。弁護士基準と比較すると軽傷・重傷ともに弁護士基準の方が高いです。
通院期間が15日の場合
通院期間が15日の場合の慰謝料相場は、自賠責基準で1万7千2百~6万4千5百円で弁護士基準の場合は軽傷時に約9万5千円、重傷の場合約14万円となっています。
通院期間とは、治療の開始から治療が終了するまでの期間を指します。なお、入院した場合は別途金額が加算されるので、状況に合わせて計算しましょう。
弁護士基準
弁護士基準の場合、通院期間が15日のときの金額は怪我の具合によって変動します。当然、軽傷(むちうち、打撲など)よりも重傷(骨折など)の方が金額が高いです。
また、弁護士基準は通院日数の影響を受けづらく、怪我の程度によってはさらなる増額が期待できます。
自賠責基準
自賠責保険は自動車を運転する人に最低限の補償を約束する保険です。15日の通院期間のうち、実際の通院日数が2日だけの場合の慰謝料が1万7千2百円となります。
そして、15日の通院期間のうち、実際の通院日数が8日以上の場合は6万4千5百円です。自賠責基準は固定の日額が支払われるので、実通院日数が金額に影響します。
交通事故の慰謝料が相場より増額されるケースは?
次は、交通時の慰謝料が相場よりも増額されるケースについて紹介します。さまざまなケースを想定し、実際に起こってしまった場合は冷静に対応しましょう。
加害者の故意や重過失が認められた
慰謝料が増額するケースの1つは、加害者の故意や重過失が認められた場合です。交通事故の発生が加害者の故意によるものや、被害者に交通事故の責任がない場合、加害者に対して相場以上の金額を請求できます。
重過失とはひき逃げ運転や、無免許運転などが挙げられます。こういったケースでは、加害者の過失割合が高いだけでなく、悪質な運転と判断されて増額される可能性が高いです。また、加害者の態度がひどいときにも増額されるケースがあります。
怪我の程度が重い
怪我の程度によっても相場以上の金額を請求できることも多いです。弁護士基準の算定表で重傷の場合、算定表から20~30%程度の増額が認められています。
具材的な例としては、生死の境をさまよった状態や高次脳機能障害などが該当します。また、後遺障害が残った場合も増額できる可能性が高いです。
さらに、大きな交通事故や死亡事故を目撃した被害者の親族が心理的ショックを受け、精神的な病気を抱えてしまった場合も増額される可能性があります。
交通事故の慰謝料請求の注意点
次は、交通事故に遭った際に慰謝料を請求するときの注意点について紹介します。病院に通院する際の注意点や示談交渉の際のポイントを掲載していきます。
注意点①通院頻度が低いと減額される場合がある
弁護士基準では、入院期間や通院期間をもとに金額を算定します。しかし、通院期間が8か月ある場合、実通院日数が10日間と120日間の場合では支払われる金額に差が生じます。
あまりにも通院頻度が低い場合は、「怪我はもう治っているのではないか」などと疑われる可能性があります。
疑われてしまった場合は、慰謝料が減額される可能性もあるので注意しましょう。そのため、通院は継続的に行い、最低でも1ヶ月に10日間は通院するのがおすすめです。
注意点②金額は加害者と被害者の過失の度合いに応じて決まる
通院によって請求できる慰謝料は、通院日数・通院期間の他に加害者と被害者の過失の度合いも影響してきます。
交通事故が起きた際に加害者が故意に事故を引き起こした場合や、交通事故後の対応が著しく悪い場合などは請求できる金額が増額される可能性が高いです。
注意点③被害者の体質や気質も考慮される
慰謝料は、被害者の体質や気質によって減額される場合もあります。体質的要因は、被害者が事故前から持っている既往症などが損害の原因となったり、被害を拡大させたりして、事故の結果に既往症が悪化したとして減額されます。
なお、減額を避けるためには、身体的素因があった場合でも事故に対する責任がないことや既往症と事故の損害には関係がないことを証明しましょう。
注意点④入通院慰謝料は性別や年齢に左右されない
入通院慰謝料は、性別や年齢によって金額の変動はありません。ただし、子供の場合は交通事故の現場に一緒にいた兄弟姉妹が交通事故を目撃したり、長期の治療のため留年を余儀なくされたりするときは例外です。
注意点⑤保険金を重複して受け取ることはできない
どこに対して損害賠償請求・保険金請求をするかで、被害者に対する賠償金の支払元が変わります。ただし、支払元が異なっている場合でも保険金を重複して受け取ることはできないので注意しましょう。
例えば、就業中に交通事故に遭った際は、労災保険に保険金請求ができます。しかし、労災保険からの保険金を受けとった場合には、任意保険会社などから受け取れる保険金は、労災分を控除したものとなります。
注意点⑥治療費打ち切りを打診されたらまずは医師に相談する
加害者側の任意保険会社は治療費を打ち切る可能性があります。任意保険会社が治療費の打ち切りを打診するのは、必要以上に治療費を支払いたくないという思惑があるからです。
任意保険会社が治療費の打ち切りを出すタイミングとして、打撲が1ヶ月、むちうちは3ヶ月、骨折は6ヶ月を基準としています。
しかし、これらのタイミングはあくまで治療期間が終わるであろう推測ですので、実際には治療中の場合も多いです。このような状況になったら、まずは担当医師に相談して治療継続の必要性を認めてもらうようにしましょう。
注意点⑦慰謝料以外の示談内容も漏れなく確認する
損害賠償請求をするのは慰謝料だけではありません。入院した場合には入院費用や看護料、入院雑費などがあり、後遺障害が残ったときは逸失利益や介護費用などを請求できます。
これらの請求内容は加害者の任意保険会社が親身に教えてくれるわけではないので、自分ですべて把握し、もれなく請求するようにしましょう。
交通事故の慰謝料は通院日数を含むさまざまな要素で算定される
交通事故に遭った際の慰謝料は通院日数・通院期間、怪我の程度などによって金額が変わります。また、弁護士基準や自賠責基準、任意保険会社基準によって算定される金額も異なるので、事前に把握しておきましょう。
なお、慰謝料以外にも損害賠償請求すべきお金があるので、自分ですべて把握して、請求漏れがないように注意する必要があります。
この記事のライター
あずき
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